各駅長時間停車の客車列車

 由布院行は赤い客車3両にDE10型ディーゼル機関車という編成だった。客車列車には乗るが、DE10の牽く列車に乗るのはこれが初めてである。

 急行「由布5号」の後をのんびりと追いかけるように走る。

 雨が窓をたたいている。

 南久留米で普通列車、御井で特急「ゆふいんの森」、善導寺で普通列車と交換した。

 各駅で行き違いをする過密ダイヤである。駅に停車する度に4、5分ずつ停車する。日田では19分も停車した。

 停車時間を利用して、大分からの急行「日南」の急行券を買っておく。

「明日の分ですか?」

 係員に聞かれた。急行「日南」は大分発2時09分である。どうがんばっても今日の「日南」には乗れない。

 日田で「日南」の急行券を買う人なんていないだろう。日田駅の売上にちょっと協力。

 ちょうど急行「由布6号」が発車するところだったので、ホームでその様子を見ていると、列車に向かって手を振っている人がいた。

 「由布6号」は急停車。

「乗るの?」

 車掌が聞いていたが、ただ手を振っていたらしい。紛らわしいことをして迷惑をかけるのはけしからん。

 そのけしからん人は由布院行に乗ったようである。

 豊後森では16分停車。スタンプを押す。恵良駅のスタンプもここに置いてあった。21時になると、なぜか「荒城の月」のメロディーがゆっくりとしたテンポで流れてきた。ほとんどの店は閉まっており、時間があっても歩き回る気にはならない。

 車窓は何も見えないが、何度か鉄橋を渡る音が聞こえてくる。結構長い鉄橋のようである。多分車窓も川沿いの自然に満ちたものだろう。

 由布院を目前にして検札があった。

 車掌は切符を見て感動していた。切符は下車印で埋め尽くされていて、ひと目ですごいと分かる切符になっていた。

 

乗務員室で雑談

 由布院からの大分行はキハ40が一両。乗客も数えるくらいしかいない。

 車掌も検札に回ってきた。退屈しのぎ?いえいえ、立派な仕事です。

 この列車の車掌も切符に見入っていた。そして、乗務員室においで、というのでお言葉に甘えてお邪魔した。

 酔っ払いが新幹線を停めた話や、ドアの扱い方を教えてくれた。

 ドアスイッチの所にある「速度検出」のランプ。点灯中にスイッチを操作しても、ドアは開かないようになっている。さらにドアが開きっぱなしで発車した場合でも、列車の速度がある程度あがると、自動的にドアが閉まるそうだ。

 と、言うことは羽越本線の出来事は、車掌がドアを閉め忘れたのだろうか?

 車掌さんは、高千穂線が廃止されるまでは延岡車掌区にいた。高千穂線に乗務していた時のエピソードを話してくれた。

 何年か前、通学で利用している高校生から就職試験当日に「保護者になってください」と頼まれたことがあった。高校生の両親は何か用事があって就職試験に行けなかった。乗務が終わってから制服姿で保護者を演じたのである。試験はめでたく合格。高千穂線の最終日に高校生の両親から花束をもらった。臨時列車の停車しない駅が最寄の駅だったが、わざわざ停車駅まで出向いて花束を渡したそうである。

「次は○○です」

 駅が近づくと、放送を入れてドア扱いをする。

「あ、乗ってきよった。ちょっと待ってて」

 途中駅から乗ってきた乗客に、車内補充券を売りに行く。乗客は少ないのですぐに戻ってくる。

 第三セクターの高千穂鉄道になってからも、沿線の高校は高千穂鉄道の職員に寄せ書きを贈ったそうである。車窓が美しいだけでなく、人と人のつながりが濃い鉄道だとは知らなかった。

 今夜の宿は急行「日南」に乗る。明日の大分到着も夜である。

 明日のために安い宿を探しておく。車掌さんは24時間営業のサウナがあると教えてくれた。

 23時21分、大分に到着。

 急行「日南」の発車時刻は2時09分。2時間20分ほどあるので、サウナの場所を確認しておく。車掌は場所が分からないと言っていたが、駅員に聞くといいよ、と教えてくれたJR職員もよく利用しているようである。

  


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