余目で昼食

 余目(あまるめ)に到着。

 次の列車まで44分。待ち時間を利用して昼食。

「どの店がいい?」

 判断を生徒に任せたのが、間違いの始まりだった。どの店がよいか決められないのだ。時間だけが過ぎていく。

 迷ったあげく、お好み焼き屋に入る。

 もう、予定の列車には間に合わない。が、空腹にはかえられない。

 でかい荷物を見て、おばさんが、

「どこから来たの?」

「さっき見せの前を荷物を持って歩いていたよね」

 などと機関銃のように話しかけてくる。

 お好み焼きを注文してしばらくすると、予定(のはずだった)列車は発車した。

「生ビール飲む?」

「はい、大好きです」

 と答えると、店の裏から

「生ビール4杯用意して」

え?生ビール4杯?

あの、私以外は高校生ですけど」

「大学生かと思った」

「非行に走らすところだった」

 笑いながら、私に生ビール、生徒たちにコーラをご馳走してくれた。

 このお好み焼き、いやにボリュームがあると思ったら、大盛りで作ってくれたらしい。しかし注文した分の代金しか請求されなかった。

「この店を選んでくれたお礼だよ」

 山形県余目のお好み焼き屋「なにわ」はJTBの「るるぶ」に写真付で載った事があるそうだ。

 次の列車まで2時間近くあるので、のんびりマンガを読むなどして過ごす。それではあまりにももったいないので、酒田まで行くことにした。

「酒田に行くなら、土門拳記念館があるから、そこに行くといいよ」

 今度は機関銃のような観光ガイド。明るいおばさんと対照的に主人はおとなしかった。

 酒田は大学1年生の夏休みに歩いたことがある。土門拳記念館は酒田駅から遠く、車がないと大変である。

「レンタカー借りたら?」

 生ビール飲んだ後で?

本間美術館

 こんどこそ乗り遅れたら本当に仙台へ行けなくなるので、駅近くの本間美術館だけ観光することにする。ついてきたのは村田君だけだった。

 入場料600円を払って中へ入る。高い!と思ったが、以前来た時は学生料金だったから、当然といえば当然である。

 展示されている絵を見ていると、学生の時の旅を思い出した。

陸羽西線は夢の中

快速「月山6号」は酒田始発。「青春18きっぷ」のように乗り放題の切符だと、時間のあるときに始発駅に先回りできるので便利である。

先頭車両はリクライニングシート車。ゆったり座ろうと思ったら、指定席だった。

発車まで時間があるので、宿泊予定のYHに公衆電話から電話を入れた。

「夕食は食べてからチェックインして下さい。七夕祭りの関係で早めに準備しますので」

YHの食事はご飯のおかわりが自由だからたらふく食べようと思ったのに。

ビールの酔いと疲れのせいか、最上川沿いに走る車窓の記憶はない。

ハプニングだらけで、思いもよらない展開が続く。一人旅では起こりえないことも多発している。一人旅は本当にきままなんだな、と実感した。

思いでボロボロ

 終点山形を目前にして、仙台行の快速とすれ違う。こんな所で離合するということは、かなり待たされるのでは…。

 山形での待ち時間は54分。やっぱり。

 仙台行はホームに停車していた。ドアが閉まっているが、車内には乗客の姿が見える。ボタンを押すと自由にドアを開閉できるタイプの車両だった。車内の気温を守るためだろう。座席を確保。

 待ち時間を利用して夕食。今度こそ乗り遅れは許されないので、ファーストフードでハンバーガーをかじる。

 山形駅は宮崎駿の映画「思い出ぽろぽろ」に登場したことがある。しかし、山形新幹線が出来る前の駅舎がモデルになっているので、今の駅には映画のような面影は全くない。改築された駅を見るのは初めてである。

 あまりの変化に思い出ボロボロ。

ついに仙台へ

 暗くなってからの発車。仙山線は山の中を走る。車窓に退屈しない路線だが、全然見えない。途中駅で乗り降りする利用者は慣れたもので、自分でドアを開けて、降りると同時に車内にある「閉」ボタンを押していた。

 仙台に到着。七夕の飾りがちらりと見えた。YHの最寄り駅は一駅福島よりの長町。先に発車する常磐線の列車に乗ろうとしたが、混雑して乗せてもらえなかった。早くチェックインしたいのに。

 反対側に停車している福島行に乗る。

高級旅館

 道中庵YHに着いたのは21時過ぎだった。早速風呂へ。なんとヒノキ風呂だった。しかもジェットバスになっている。以前、仙台に来た時、このYHは改築中で泊まれなかった。部屋も何もかもが新しい。寝室も立派な和室だった。

 旅先での最後の布団である。心して寝た。

行程表前のページへトップページへ戻る





inserted by FC2 system