4月。
2、3年生は新しいクラス編成になる。
1年生は高校生になりたてのホヤホヤ。初々しく、緊張顔である。
学年に違いはあっても、初めての授業は期待と不安にあふれている。
最初の授業で、どのような形で進めていくか、評価をどうするかを説明していく。
例えば、ノートの取り方、話をきちんと聞くこと、平常点のつけ方、ノート点のつけ方などである。
「ノートは黒板に書かれたことだけ書いても満点にはならない。満点を取るにはさらに私の説明を自分の言葉でまとめること。点数はもらうものではない。勝ち取るものだ」
生徒たちも、どんな先生なのか探りを入れながら、話を聞いている。
授業内容の次は、自分の説明である。
「自己紹介するよりも、皆さんからの質問に答えましょう。何か質問は?」
一人の生徒がおそるおそる聞いてきた。
「センセイ…何か宗教に入っていますか?」
「別に」
「オ○ムとか…」
遠慮がちに聞いてくれるのはまだ、いい。
「センセイ!オ○ムでしょ!」
と決めてかかる生徒もいる。
なぜだ!
そんなにカリスマ性の高い姿格好をしているのか?
頭はスポーツ刈り、スーツ姿、かなり痩せ型で、背がひょろっと高いだけなのに。
授業に行くクラスのほとんど全部で質問された。
「次に質問は?」
「女いますか?」
「いるよ。母ちゃんが一人。妹が一人」
「違いますよ。彼女のことです」
「ああ彼女?いないよ」
「いる」と答えたら、次の質問は決まっているから、いないと答えるようにしている。
「あの…。もやしは好きですか?」
「うん。好きだよ」
なぜかここで笑いが起こる。
痩せている事ともやしが好きなことと、どういう関係があるのか?
これもクラスの全部で必ず質問された。
「センセイ、童貞ですか?」
やっぱり高校生。性の事には関心がある。最初の授業ではこの質問も必ず受ける。
「ど〜て〜、そんなこと聞くの〜?」
わざと暗い口調で、相手をとがめるような、責めるような
雰囲気で答えた。この質問にはこう答えることにしている。
すると教室が笑い声に包まれる。それ以上は追求されなかった。
さらに追求された時は、「秘密」「謎」と答えている。
「何で秘密なんですか!教えてください」
「う〜ん、20代で童貞だとなんか恥ずかしいし…。すでに経験あると答えたら、根掘り葉掘り聞かれて、これまた恥ずかしいし…」
センセイには何かしら神秘的な部分、謎めいた部分があったほうがいいでしょ?
こうして、みといなというセンセイが何者であるかを理解してもらい、次の時間から授業が始まるのである。